ハヤオキスルフクロウ

早起き < 呑み会

ビールが大嫌いだった僕がビール検定2級を取得する話

Caution!!

記事の途中で注意とか書いちゃうと流れが悪くなるので最初に書いておく。

注意!!

  • 「ビールは全人類飲める必要はない。飲みたい人だけ飲めばいい!」と思っている。
  • 僕の真似をして飲めるようになる保証はない。たまたま僕に合っていただけという可能性を否定できない。

Hello Beer!!

f:id:fkubota_owl:20211202164343p:plain 話は2017年の春まで遡る。
当時物理学科の修士2年生だった僕はいろいろあって(本当にいろいろあった)専門商社に内定をもらい、これまたいろいろあってそこにお世話になることになった。
その会社にはユニークな制度があって、入社後すぐにドイツに行く研修がある。
ドイツと聞いて最初にイメージするのはそう、ビールだ。ビールとソーセージ、素敵な響きだ。

そんなビールには大きな欠点がある(正確には"あった"だが)、僕が大嫌いという事だ。

見た目までは完璧で隙なんて一つもない。黄金に輝く液体、それに蓋をするように美味しそうに浮いているきめ細かい泡たち。
飲むと美味しいにはずなのに、これが不思議と美味しくない。
匂いも含め褒めるところが一つもない。
なんなんだこれは。

当時の僕は最初に飲んだ時そう思ったし、その後何年もそう思い続けた。

そんなときに知らされたドイツ研修。
これは克服しないわけにはいかないなと一大決心しビールトレーニングをすることにした。
時は流れトレーニングを開始してから4年後の2021年11月にビール検定2級を取得してしまった。
今ではビールがない生活は考えられないほどのビール好きになった僕。

この記事では一つの区切りとして、僕とビールの歴史を書こうと思う。
未来の僕から見るといささかむず痒い記事になるだろうが、黒歴史の1つや2つあったっていいじゃないかと思うので書く。

本編

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僕がどれくらいビールが嫌いだったかって?
当時は間違いなく1番嫌いなものだった。
「とりあえず生」の掛け声を断る事ができずに頼んだビールは一口が限界だった。
その後は隣の理解ある友達に目線を送る「わかるよな?」その合図で彼は残りのビールを飲んでくれる。そんな感じ。

そんな僕が、「ドイツ研修がある」→「故にビールトレーニングをする」というのは論理の飛躍も甚だしいと思う人もいるだろう。
でも本当に理由はそんなものだった。せっかくドイツに行くのにビールを飲めないのはもったいないな。それに飲めるようになると今後の人生の楽しみが増えるってもんだ。 できないよりはできたほうがいいという文脈で、嗜好品を楽しむチャンネルは多いほうがいいに決まっている。

そんなこんなでトレーニングをすることになった。
僕は過去にも似たようなことをいくつも経験したことがある。 例えばコーヒー、コーヒーをブラックで飲むことには憧れがあり、研究しながらコーヒーを飲むのはかっこいいと思っていた。
たったそれだけのモチベーションで2ヶ月ほど試行錯誤をした結果苦手だった苦いコーヒーが飲めるようになった。
過去の経験からビールもいけるだろう、そういう謎の自信だけを持ってチャレンジは始まった。いや、始まってしまったと言う方が正確か...。

f:id:fkubota_owl:20211202165045p:plain ここからは僕の成長を4段階で描いていく。ちょうど季節にして春夏秋冬で表現できる。

夏。就活も無事終わり、秋の学会にソワソワし始めた頃に僕のビールトレーニングは始まった。
新しいチャレンジを行う時に必ず初めに行うのは知識の獲得だ。
とりあえず周辺知識から固めていった。
図書館で2冊ビールの本を借りて読んだ。書店ではビール特集みたいな雑誌を1冊買った。
ビールとは何なのか、材料は?、歴史は?とざっと学んでみた。
1冊読む毎に彼と少し仲良くなった気がして缶ビールを買っては飲んでみた。
相変わらず外っ面だけよくて肝心の中身は残念なやつだった。
打ち解けるのは時間がかかりそうだ。

知識をつけつつもう一つ、少し高いビールを飲んで見るというのもやってみた。
高いものはうまい理論を全面に押し出したこの挑戦は、貧乏学生の財布に小さくないダメージを残して静かに音も立てずに終わった。

夏の挑戦はある程度想定の範囲内
知識をつけたって、高いものを飲んだって大嫌いなものが飲めるようになるはずがない。

そうやって強がっている僕が次に取り組んだのは「手に入りやすいビールの中に僕が飲めるビールはあるか?」という問題だ。

具体的には以下のことをしてみた

  • 友達に飲みやすいビールはあるかと質問する
  • インターネットで「ビール 飲みやすい」「ビール 苦手でも」「ビール 苦くない」 などのワードで一通り調べる
  • ビールと何かを混ぜて飲みやすくする

結論から言うと全滅だった。
すべて一口が限界で、希望の光はこれっぽっちも顔を出さなかった。
うーん困った。僕の症状は想像していたよりも重いのかもしれない。
そう思い始めていたら紅葉という概念のない沖縄の秋(知ってた?)は終わっていた。

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飲みやすいと言われるビール

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自分の症状が重いことがわかり落胆している僕。
同時に修論という文字が一日に5000回ぐらい頭をよぎる修士2年の冬がやってきた。
つまり僕だけ2つのビックプロジェクトを抱えているというわけだ。

販売されている商品に救いがないことがわかった僕は、独自の道をたどるしかない事を悟っていた

ここからは地道にやるしかないと心に決めた僕はシャンディーガフに目をつけた。
シャンディーガフというのは、ビールとジンジャーエールを混ぜたカクテルだ。
秋に試していたが一口飲んだだけでその後疎遠になっていたやつだ。

目をつけた理由は簡単でこいつを使えば、確実に飲めるようになることを知っていたからだ。
できれば避けたかったが止むを得ない。

ではなぜ確実に飲めるようになると考えているかを説明する。

まず、以下の事実がある。

簡単のためにシャンディーガフの定義を広く取って、ジンジャーエールにビールが1滴でも入っていたらそれをシャンディーガフとする。
ビールの量によって、ビール感の強いシャンディーガフとビール感の弱いシャンディーガフがあるというわけだ。

ビールが1滴だけ入ったシャンディーガフを飲めないわけがないので、グラデーションで分布するシャンディーガフの中に、ギリギリ飲めるシャンディーガフとギリギリ飲めないシャンディーガフの境界が存在することになる。
僕はこの境界を自分のビール力を表す指標とした。
あとは、この境界をジリジリと押し上げれば時間はかかるかもしれないけれど、いつかはビールが飲めるようになるというわけだ。

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左がジンジャーエール、右がビール。この間のどこかに僕がギリギリ飲めるシャンディーガフが存在する。

大げさに式にするとこんな感じの式で表現できる。


ビール力 = \frac{ビール}{ビール + ジンジャーエール}

一般的なシャンディーガフはビールとジンジャーエールを1:1で混ぜるのでシャンディーガフが飲めるのであればビール力は0.5以上あることになる。
ちなみにこのときの僕のビール力は 0.1だった。つまり ビール:ジンジャー=1:9 で混ぜるのがやっとだったわけだ。

さてここからが大変だ。確実だが果てしない挑戦が続いた。
研究もかなり忙しく、夜中の2時に帰るのは当たり前だったのでビールのトレーニングはその後に始まることになる。
疲れた体に鞭打って飲みたくもないものを飲むのは苦行以外のなにものでもない。

できれば毎日やりたかったがもちろん怠けた日もある。
5日やらなかった日もあるし、飲む日と飲まない日を交互に過ごす時期もあった。
それでもなんとか続けられたのはやっぱりビール力という目に見える指標を用意していたからだと思う。
時間はかかったが日に日に成長していた。
呑み会ではチャレンジとしてビールを頼んで1口以上飲めたりしたときは素直に嬉しかった。

そうやって日常は忙しく過ぎていき冬が終わった。
秋の3ヶ月でシャンディーガフが飲めるようになった。
つまりビール力が0.5を超えたのだ。 ドイツ研修は5月。もう時間がないぞ。間に合うか??

日本の春は3月から始まる。
僕にとっては特別な月で長かった学生生活最後の月になる。
沖縄から東京への引っ越し、就職の準備、学会(この時期に参加するのは珍しいと思う)の準備で大忙しだった。
気づいた時には入社式を終えていた。
一段落したころに新卒同期にホッピーという飲み物を教えてもらった。
これがビール力0.6ぐらいの僕にはピッタリのビールトレーニングアイテムとなった。
おそらくビール力0.7~0.8程度必要な飲み物だがもう時間がなかったので、荒療治にはなるがお店で買って可能な限り家で毎日飲んだ。
そして訪れたドイツ研修。そこで僕は覚醒することになる。

覚醒の時

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僕はドイツに降り立った。
初日の夜にレストランに行き、ビールを頼んだ。もちろんソーセージも一緒に。
ビールを一口飲んでみた。おや?うまいぞ??
なぜかゴクゴク飲めた。それもそのはず、このビールはヴァイツェンと呼ばれるドイツの伝統的なビールで日本のビールより飲みやすいのだ。
以前なら飲みやすかろうが関係ない。ビールであるというだけで僕は一口が限界だった。しかしこのときの僕は以前よりビール力が桁違いに高い。

叫びだしたいほど嬉しかった僕は、叫ぶ代わりに何杯もビールを飲んだ。
僕のトレーニングを知っていた同期達も嬉しそうに一緒にビールを飲んでくれたのは今でもとてもいい思い出。

ここまでが僕が覚醒するまでのお話。

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あまり写真を撮ったりしない僕。ドイツでも10枚ほどしか写真を取っておらず、ビールの写真は0。代わりにこいつが3枚もあった。

ビール検定2級合格

f:id:fkubota_owl:20211202175417p:plain 日本に帰ってきてからは毎週のようにいろいろなビールを飲んだ。
ビアバーに行くときもあるし、めずらしいクラフトビールを飲んでは幸せな気分に浸っていた。
聞いたことのないスタイルのビールがあれば調べてどういう特徴があるのかなど、気になったところを勉強をしていた。

そうやって僕の生活にビールは根付いていき、気づけば友人の中ではビールに詳しい方になって、無類のビール好きになっていた。

そんなときにふと、もう少し体系的に勉強をしてみたいなという意欲が湧いてきた。
製法やスタイルなどは一通り理解しているつもりだが、ビールの作るどの工程やどの材料が味に変化をもたらすのかをもう少し解像度高く理解したくなったのだ。
調べてみるとビール検定なるものがある。これは受けないわけにはいかないなと思いさっそく申し込んだ。
3,2,1級があったがいろいろ考えて2級を受けることにした。
問題は、原料や基本的な製法・スタイル、ビールの歴史、ビールの味わい などなど かなり幅広く出る。(実技試験はない)
興味ある人はココ↓を見ると知りたいことがわかると思う。 beerken.jp

100点満点中70点で合格だが、ギリギリの73点で合格だった。
正直ビールの日本史とかにはあまり興味が持てず苦手な印象があり点数も低かった。
一番学びたかった製法やスタイルの部分はめちゃくちゃ解けた。

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検定を勉強してよかったのかと聞かれると間違いなくよかったと答える。
今まで点で理解していた部分が繋がりバラバラだった知識が体系化された感覚がある。
実際にビールの紹介文を見ると製造工程のどこで味の違いを出しているかが以前よりはるかに解像度高く理解できるようになった。

ここまで長かったですが、結局何が言いたかったのかというと特に言いたいこともなく、僕はビールが飲めるようになり、さらに初心者に毛が生えた程度の知識も手に入れたってだけ。

また一緒にビール飲もうね:)